世界史ときどき語学のち旅

歴史と言語を予習して旅に出る記録。西安からイスタンブールまで陸路で旅したい。

2024年ウズベキスタン旅行 11日目 : タシュケント観光

2024年ウズベキスタン旅行11日目(2024-05-06)の記録です。 いよいよ最終日、タシュケントのバザールや博物館を周ります。 応用美術博物館は美しい工芸品の数々が並んでいたので、「乙嫁語り」の世界や雑貨などが好きな人にはお薦めです。

今回の旅全体のまとめはこちら amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

前日の旅行記はこちら amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

チョルスーバザール

今日の観光はまずはチョルスーバザール。 ホテルから近いので歩いていきます。

子供向けの英語教室とかでしょうか?

市場の敷地の外のはずですが、野菜が並べられていました。

このへん車の出入口になっていて、大型トラックも出入りしていたので要注意。ちなみに私が見かけたのはISUZUのトラックでした。

チョルスーバザールの象徴ともいえるドーム! イスラーム文化圏のバザールと言うと、狭い路地が入り組んだ空間をイメージしてしまうのですが、ここチョルスーバザールでは、肉などを扱うエリアはこのドームの中に収められています *1*2

バザールそのものはこの建物の内外に広がっているのですが、まずは建物の中から見ていきます。 2階建てで、

1階は肉類、

ピクルス類?、

乳製品などがエリア別に分けられて並んでいました。 肉は大きな塊で置かれていたのが印象的。 1階には意外と観光客はあまり見かけず、現地の方が多かったように思います。 買い物客は一般家庭の人なのか、それともお店で売ったりレストランで使ったりするのか気になるところです。

ところで肉類のコーナーで見かけたこちらの品、見かけたことのないものなので正体が気になります。 ぱっと思いつくのは脂尾羊の尾(というかお尻?)の脂肪の部分ですが、確証はないです。

2階に上がると、こちらはナッツやドライフルーツのお店が多く、観光客向けの客引きなどなどありました。

2階からはドーム内の全体像がよくわかります。2階といっても建物の縁の部分しかなく、基本は1階だけ。高いドームの下の空間をなかなか贅沢に使っている気がします。

肉売り場の裏の内部の様子もよく見えます。

さて、ここまで見て野菜が見当たらないなーと思ったのですが、

野菜売り場は屋外でした。

ドーム内の1階も、こちらの野菜売り場も、様々な食材が並んでいて面白かったので、バザールで買い物+料理教室のような企画があれば次は参加してみたいです。

なお、食料品しか見ていませんが、ドームの外(野菜エリアのさらに外側)には服などのエリアがありました。 私は結局バザールの一部しか回っていないですが、全体像が気になる方はこちらの伊藤さんの記事が参考になるかと思います。

www.arukikata.co.jp

地下鉄

さて、次はチョルスー駅から地下鉄で移動...だけでなく、地下鉄駅自体も観光地になっているので、いくつか有名どころの駅を周ることにします。

駅に入るにあたっては手荷物検査がありましたが、中国の地下鉄に比べるとだいぶ緩めな印象です*3

改札はこちら。 クレジットカード*4のタッチ決済で乗れるので、とってもお手軽で便利でした。

チョルスー駅自体は、比較的地味な駅です。

ここから電車に乗ってお目当ての駅まで移動です。 車両は少なくとも2種類あるようで、旧型の方は車内アナウンスなしで、ゆれもかなり大きめ。 新型の方はアナウンスもあり、揺れも少なく快適でした。 なお、平日の昼なのに車内はかなり混雑していました*5

アリシェル・ナヴォイ駅

まずはアリシェル・ナヴォイ駅。 チャガタイ文学の先駆者、アリーシール=ナヴァーイーに因んだ名前の駅です。 頭上には列柱と小ドームが並び、イスラーム建築の香りを感じます。

ホーム壁にもタイル?装飾が施されています。

抽象的な装飾だけでなく、物語の場面を描いたようなものもあります。 いずれも文字部分に物語の題が書かれていて、左はFarhod va Shirin*6、右はLayli va Majnun*7*8という恋物語のようです*9。 どちらもペルシア文化圏の物語ですが、ナヴァーイーの手によってチャガタイ語版が著されたそう*10

こちら、左はSaddi Iskandariy(「イスカンダルの城壁」?)*11、右はSabʼai sayyor*12という、叙事詩の題のようです。 物語を知ってる人からすると、「ああ、あの場面ね」と納得するのかなー、とか、見た人の感想が気になるところ*13

ホームだけでなく、駅構内の随所に関連する装飾が施されていました。

パフタコール

さて、お次はアリシェル・ナヴォイ駅に直結のパフタコール駅に。

ホームに下る前にして既にモザイク装飾(?)が目に入ります。

そしてホームはこちら。ちょうど降車した人が多いタイミングでかなりの混雑でした。

気になるホーム壁面の装飾は、どうやら綿花をモチーフにしたもののよう。 綿花といえばソ連時代のウズベキスタンの主要な輸出農作物*14で、この駅の名前paxtakorも(google翻訳曰く)「栽培者」*15です。

コスモナウトラル駅

先ほどは2つまとめて歩いてみましたが、再び地下鉄に乗って、次の目的地のコスモナウトラル駅に移動。

青色を帯びた装飾がなんとも幻想的で美しい駅です。

駅の壁面には、駅の名前が示唆する通り、天文や宇宙に関わるモチーフが描かれています。 まず左はティムール朝のウルグ・ベク。 君主であると同時に天文学者でもあったウルグ・ベクの功績については、サマルカンドの博物館で詳しく見ましたね。 amber-hist-lang-travel.hatenablog.com 右は「ツィオルコフスキーの公式」で知られるロケット工学者のツィオルコフスキー

世界初の宇宙飛行士ガガーリン(左)と女性初の宇宙飛行士テレシコワ。

"НАШ ЗЕМЛЯК КОСМОНАВТ В.А.ДЖАНИБЕКОВ"、google翻訳曰く「私たちの同胞宇宙飛行士 V.A.ジャニベコフ」。タシュケント出身の宇宙飛行士ジャニベコフ*16のことかと思います。 ちなみにこの名前をググる際に知ったのですが、大学生のときに古典力学で習った「テニスラケットの定理」は、「ジャニベコフ効果」と呼ばれることもあるとか。

人物以外のモチーフもあり、たとえば左は最初の月面探査車ルノホート1号。 右のСОЮЗ ~ АПОЛЛОН、「アポロってアメリカのでは?」と思ったらその通りで、これはソユーズ・アポロの共同飛行(ドッキングも含む)*17のことのようです。これは帰ってきて調べて初めて知りました。

昼食

昼食のため、地上に出ます。

これは道中見かけた、ソビエトを感じる(気のせいかも)集合住宅。

お昼は、ちょっとおしゃれなグルジア料理のお店で。

豆のサラダ?、ヒンカリ、スープ。 なお、おしゃれなお店だけあってかけっこうなお値段がしました。 美味しかったのですが、サラダが思った以上に豆でずっしりしていて、食べすぎ。。。

ちなみに、お店の方はウズベク語が通じなかったのですが、1人だけ英語が通じるおば様がいてその方とは英語でやりとりし、他の店員さんとはgoogle翻訳でロシア語でやり取りしました。 ロシア語話者の方だったようです。

ウズベキスタン国立応用美術館(Museum of Applied Arts)

せっかく首都タシュケントに来たのでいろいろな博物館を周りたい! と思っていたのですが、あいにくこの日は月曜日でほとんどの博物館は休館日。

ということで、月曜でも開いているMuseum of Applied Artsに来ました。 お昼のお店からは歩いて行きました。

Applied Artsとはなんぞ?と思ったのですが、基本的には工芸品の美術館/博物館のようです。 展示はジャンル別にまとめられており、大雑把には織物、刺繍、楽器、細密画、陶磁器、木彫、金属細工などに分かれていました。

ありがたいことに、展示解説パネルには英語あり。

入口すぐのところで精巧な木彫が迎えてくれました。 屋根つきとはいえ野外にしれっと置かれていますが、キャプションによると19世紀のものも含まれているとか。 いずれもヒヴァのものだそうで、ヒヴァの大モスクで見た、彫刻が施された柱を思い出しました。 amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

織物/刺繍

まずは織物が少し。

刺繍(スザニ?)の展示は分量的にも多かったと思います。

人の背丈より大きい刺繍などは、サイズの大きさと模様の緻密さがあいまって迫力すら感じました。 ちなみに上の2点はいずれも19世紀のもの。

また、ここまでは手作りの刺繍(hand-made embroidery)ですが、

すぐあとには機械刺繍?(machine embroidery)の展示コーナーが続きます。

手作りのものと作風の比較もできるかも? と言いつつ、私は刺繍の知識がないので全然分かりませんが。。。(ぱっと見の印象では、機械刺繍の作品の方が、単色塗りつぶし?の面積が大きくて模様の輪郭がくっきりしてる気がする?(いや、でも単純に作られたのが最近で色彩が綺麗に残ってるだけからかも?

ちなみにこのへんで残念ながら団体客とかち合ってしまったのですが、ゆっくり刺繍を眺めてやり過ごしました。

楽器

弦楽器はタール、ルバーブ/ラバーブ(アフガンのものとカシュガルのもの)、ドゥタールあたりは割と知ってるもの。 左下の胡弓のような楽器はイランなどで見かけるケマンチェかと思いきや、gidjak*18とのこと。 また、中央の巨大なラッパはkarnay*19というそう、名前は初めて知りました。

ちょっと驚いたのは、こちらのchang。おそらく打弦楽器で、中国の揚琴、イランのサントゥール、ヨーロッパのダルシマーと同系統の楽器かと思います。 中央アジアで演奏されている印象が全くなかったので、個人的にはちょっとした発見で嬉しい。

なお、螺鈿細工など華やかな装飾が目立っていたので、実際に弾く用というよりは調度品としての品だったのかもしれないです。 また、ここで展示されていた楽器は20世紀後半の制作のものが多かったです。

細密画

展示されていた細密画は、ほとんどがとても小さな作品でした。

ピントあっていなくて分かりにくいのですが、小さな紙面に、とんでもない細かさで絵が描きこまれていて驚かされました。 この衝撃は実物のサイズ感(小ささ)あってこそなので、ぜひ実物を見ていただければと思います。

制作年代は2000年代など新しいものが多かったと思います。

木彫

既に入り口でも仲間を見かけましたが、緻密な彫刻が施された扉や柱、あとは他に寄木細工のようなものがあった気がします(寄木細工などは、写真撮り忘れた + 記憶があいまい。)。

ところで複雑な意匠が彫り込まれた扉はイスタンブールのトルコ・イスラーム美術博物館でも見かけました。 意匠や材質など、地域差もあるのかなど気になるところ。 amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

建物について

こちらの博物館、展示品だけでなく博物館の建物自体も美しかったです。

博物館中央には中庭が広がり、この中庭を囲む形で展示室が並んでいます。

見事な装飾。 ダビデの星があしらわれているので、もしかしたらサマルカンド郷土史博物館のように、元はユダヤ商人の邸宅だったのでしょうか。 amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

内部。 上述のサマルカンド郷土史博物館や、ブハラのホジャエフ博物館と雰囲気が類似してますね。 amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

毎度のことですが、壁面全部をびっしりと埋め尽くす装飾が印象的です。 日本だと障壁画とかもなんだかんだで余白がけっこうあると思うので、方向性がだいぶ違って面白い気がします*20

工芸品、特に刺繍は全然知識がなく、この博物館も「他に開いてる博物館ないしなー」とやや消極的な理由で訪問先に加えたのですが、思った以上に良いものが見れて、来てよかったです。

スーパー

お土産探しも兼ねて、近くのスーパーに行ってみました。 有名どころのチェーン店のようで、海外からの観光客と思しき人も多かったです。

肉類(ここのはmolなので、牛肉。)。単位がkgなのもすごいし、1000So’mがだいたい12円くらいと思うと、やはりお安め。

加工肉。ハラールと書かれていたものが目についたので、豚肉ではないはず。

アイラン(塩味のヨーグルトドリンク)。 量が量だし最終日なので買いませんでしたが、アイランは大好きなので、ホテルに何日か滞在する日程ならたぶん買ってたと思います。 ちなみにどれくらい好きかと言うと、イランを旅した時はほぼ毎日飲んでたくらいです(イランでの呼び名はドゥーグ)。

ウズベキスタンの料理はなかなか油多めだったわけですが、油としてはひまわり油が多いとどこかで聞いた気がします(要出典。)。 ということでひまわり油いろいろ。 日本から来た人はお腹壊しがちと聞きますが、今回は幸いにして油にやられることもなくて良かったです。(がしかし、よりによって最終日のこの日に、昼の食べすぎという別要因によりお腹壊してます。。。)

久々に見かけた魚! 今回の旅ではほとんど魚介は食べてない気がします。 何の魚か気になってbaliq do'ngpeshanaをgoogel翻訳させたのですが、「ザトウクジラ」という絶対間違った答えが返ってきましたw 二重内陸国ウズベキスタンなので、たぶん淡水魚だとは思うのですが、詳細不明。

お土産を少し買って、次の目的地に向かいます。

駅まで歩く途中、まさかの日本語を見かけました。いったいどういうこっちゃ。。。

続いて中国語も。

地下鉄に乗っての移動なのですが、

こちらの駅もなかなか綺麗でした。 駅の名前はming o'rik、千本桜ならぬ千本杏、というところでしょうか。

Amir Temur Xiyoboni駅で降ります。

ティムール広場

ということで、今回の旅の最後の観光地、ティムール広場に到着です。 広場という名前ですが、緑が多く、どちらかというと緑地や公園と呼びたくなります。

周囲にはソ連らしい建物が周囲にいくつか。 左はホテル・ウズベキスタン、右はYandex maps曰くPalace of International Forums Uzbekistanという、コンサートホールなどが入った文化施設だそう。 ところで右の建物にあしらわれた人の顔のようなもの、サマルカンドのシェルドル・マドラサのものとそっくりな気がします。

amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

中心にはティムールの像が鎮座します。

近くにあった銘板曰く、この像は1993年に整備されたものだそう。 ソ連時代はティムールには否定的な評価がされており、ここに鎮座していたのもレーニンスターリンの像だったと読んだ気がします(要出典)。

フライトの時間まで余裕があるのでしばしのんびりしていたら、若い方から「インタビューさせてください」というお願いが3件もありました。 <--女子3人が1組、男子2人が1組、女子2人が1組--> 最初の2組は初手ロシア語で声をかけてくださったのですが、ロシア語は全く分からない(まだウズベク語の方が分かる)ので英語で。

訊かれた内容は、「今までどんな国に行きましたか?」「ウズベキスタンとそれらの国の違いはなんですか?」「ウズベキスタンで好きな料理はなんですか?」などなど。 気になって質問してみたところ、どうも大学?の宿題だそうです。 ちなみに最後にインタビューして来た方の英語は私よりはるかに流暢でした。

空港~帰国

Yandex goでタクシーを呼んでも来ないなーと思ったら、車線の反対側に止まっていて、5車線くらいある車道を信号なしで横断する羽目になりました。 このときの運転手の方は珍しく英語が話せる方だったので、少しお話しました。 料理の話になったときに「ウズベキスタンのプロフ美味しかった」という話をしたら、なんと家でも週に2回くらい作ってるとのこと(さすがにカザンではなく、フライパン?らしいけど。)。 あと、このときは比較的過ごしやすい季節(と言っても陽に当たると暑い)だったのですが、これからもっと暑くなって夏は40℃や50℃になる、と言っていた気がします。

まさかの空港内でもノン(ナン)が売られていました。 がしかし、昼の食べすぎでお腹空いていない(というかお腹が痛い)ので、見送り。

名残惜しいですが、搭乗! この後往路と同じく韓国で乗り継ぎ、翌日に日本に帰国しました。

*1:と言っても、バザールの外側部分(服やカバンなどを売っていたエリア)は上述のイメージに近い空間でした。

*2:サマルカンドなど他都市ではバザールに行かなかったので、ウズベキスタンの他のバザールとは比較できないです。

*3:X線検査はなし。金属探知機をかざして、必要に応じてバッグを開けるくらい。

*4:日本発行のVISAカードがそのまま使えました。

*5:もしかしてお昼は家に帰って食べるとか???

*6:https://uz.wikipedia.org/wiki/Farhod_va_Shirin

*7:https://uz.wikipedia.org/wiki/Layli_va_Majnun

*8:日本語でもライラとマジュヌーンとして知られているかと思います。

*9:このときはキリル文字は読めなかったのですが、後でロシア語を学ぶためにキリル文字を少しさらったので、今はギリギリ読める...はず...。ということで作品名のラテン文字表記やあらすじ的なものは、帰ってきてからググって見つけました。

*10:上記wikipediaを斜め読みしての理解。なお、直接的な翻訳というわけでもなさそうで、物語の一部を改変しているようです。

*11:https://uz.wikipedia.org/wiki/Saddi_Iskandariy

*12:https://uz.wikipedia.org/wiki/Sab%CA%BCai_sayyor

*13:ナヴァーイーやチャガタイ文学については「ウズベキスタンを知るための60章」「中央ユーラシア文化事典」などにも言及があったはずなのですが、今手元になくて確認できないので割愛。後で調べたい。。。

*14:要出典

*15:おそらく暗に綿花栽培者を指す?

*16:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%8B%E3%83%99%E3%82%B3%E3%83%95

*17:https://iss.jaxa.jp/column/norisan/vol3.html

*18:英語表記。ウズベク語表記だとg’ijjak

*19:英語表記もウズベク語表記も同じ。

*20:と言いつつ、こっちだと抽象的な模様を使った装飾が発達したから、全面に装飾を施す方が単に自然なだけかも?