2023年冬 西安と蘭州の旅4日目(2023-12-16)の記録です。 この日は宝鶏に移動して観光です。
今回の旅全体のまとめはこちら amber-hist-lang-travel.hatenablog.com
前日の旅行記はこちら amber-hist-lang-travel.hatenablog.com
宝鶏への移動
蘭州西駅
朝6時前、朝早くでまだ日も出ておらず、気温約-15℃。 タクシーで蘭州西駅に向かいます。
蘭州西駅も西安北駅と同じく新しい駅で、2階には飲食店が並んでいます。 まだ夜明け前なのに営業しているところも多くて嬉しい。
ということで、駅内で朝食にします。 蘭州なので、やはり蘭州牛肉麺。この旅では3回目の牛肉麺です。 この牛肉麺はパクチーが入ってなかった気がします。 前日のお店はパクチー入りで、2日前のお店はパクチーなし(緑は葉ニンニクだけ)だった気がするのでお店に依るかもです(もしくは別料金で足せる?)
ご当地名物的な料理もお店によっていろいろなので、同じ料理をいくつかのお店で食べ比べるのも面白い気がします。 何よりも、1つのお店だけで食べて「期待ほどじゃないな、がっかり…」となるともったいないし、自分好みの味に出会えると嬉しい。
乗車。7時前なのですが、外はまだ真っ暗。
トンネル区間も多いので、車内ではひたすら寝ます。
宝鶏南駅
2時間ちょっとで宝鶏南に到着しました。 降りる人は少なかったです。
駅出口でタクシー運転手がたくさん待ち構えてて、眠くて深く考えずについていってしまいました。 が、車についてみたら白タクだったし、冷静に考えたら価格もぼったくり。 普通に考えて車両を確認してから誘いに乗るべきなので、これは痛恨のミス。
宝鶏青銅器博物館
概要
- 公式webサイト : http://www.bjqtm.com/
- 月曜定休。その他詳しい営業時間については上記webサイト参照。
- 事前予約が必要と書かれていますが、事前予約には中国の携帯電話番号と身份证が必要です(パスポートでは予約できませんでした)。ということで現地にそのまま行ったところ、予約なしで入場できました*1。連休などで予約枠がいっぱいのときにもこれで通用するかどうかは分かりません。なお入場無料です。
- だいたい2時間ちょっと滞在しました。秦の青銅器や、玉器の展示などざっとしか見てない部分も多いので、全部じっくり見るともっと時間がかかりそうです。
- 青銅器の分類や用途などについて少し予習していくと良いかもしれません。私は「中国青銅器入門 太古の奇想と超絶技巧 」(参考文献[1])を事前に読んでいきました。本の感想などについてはこちら参照。
「青銅器博物館」と名前についていますが、青銅器以外の展示品も多いです。 上の写真の通り、3階(メインの出入り口はここ)は青銅器、4階は玉器、土器や陶器、鏡が展示されています。 2階は企画展示室が2つありました。
青銅器
宝鶏周辺から出土した周と秦の時代の青銅器を主に展示していました。 古代中国の青銅器は日本だと美術品として扱われることが多い気がする(たぶん)のですが、この博物館ではがっつり歴史の文脈で語られる部分も多いのが印象的です。
展示冒頭には、2003年に宝鶏市の楊家村でまとまって出土した青銅器が並べられています。 物量がすごい。
左は「壺」と呼ばれる酒器、右は「盉」と呼ばれる水または酒を入れる容器。 いずれも西周の品です。 話が逸れるのですが、このへんの青銅器の名前と用途については上でも触れた「中国青銅器入門 太古の奇想と超絶技巧 」に分かりやすい記載があります(イラストつきで代表的な器形を一覧できて便利。)。
こちらも2003年楊家村出土の「盤」と呼ばれる青銅器。 がっつり銘文が書かれています。
丁寧に釈文も示されています。 素人感想なのですが、現代の漢字とは大きく異なる字形で書かれた文を釈文に直せること自体が興味深いです(どうやって文字の同一性を担保してるんだろう。)。
肝心の内容ですが、ここから西周の王統について詳しい情報が得られ、「史記」に記載された内容と整合しているとのこと。 伝世文献史料と出土史料をつきあわせて歴史を論じる話が大好きなので、これはかなり面白い。
西周時代の「卣」(ゆう)*2。 饕餮文の角が器面から立体的に浮き出ているのが印象的。
こちらは「何尊」と呼ばれる西周時代の「尊」。 広くとった展示コーナーに展示されている、特別な品です。
というのも、この銘文には「中国」という語が書かれており、今のところ「中国」という語の最古の用例なんだとか*3。
西周の青銅器ばかり取り上げてしまいましたが、他にも殷や秦のものもあったと思います(西周のものでおなか一杯になって、他の青銅器の写真を撮りそびれた。。。)。
土器・陶磁器など
青銅器以外の展示があるとは知らずに行ったのですが、王統や合戦の話よりは日常生活の話に興味がある身としてはこちらも非常に興味深かったです。
漢代の小さな竈いろいろ。 副葬品として造られたミニチュアだと思いますが、当時の調理の様子がうかがい知れるかもしれません。
左下に描かれているのは魚でしょうか。
こちらは右奥の魚(?)に加え、数々の数々の調理器具も見て取れます。 手前左の人物は竈の火の番をする者かもしれません。
こちらは時代がとんで宋代の墓の彫刻煉瓦(?)。 植物文様や武人の彫刻だけでなく、日常生活の様子を描いたものもあります。
これなんかは調理の様子でしょうか。
机と椅子で食事をする様子が見て取れます。確か漢代は椅子に座る習慣がなかった気がする(要出典)。
他に饅頭(?)を蒸篭で蒸していると思しき場面もありましたが、暗くて写真がうまく撮れず。。。
鏡
こちらは確か唐代の鏡。
玉器の展示はざっとしか見ていないので割愛。
臨時展
このときは2つの展示があり、
1つは兔にちなんだ文物や図像の紹介(確かパネル解説がメイン)、
もう1つは青銅器から往時の礼制などについて紹介するものでした。
西周時代、身分によって所持できる鼎の個数などが決まっていたよう(たぶん)。
たぶんこの臨時展に関係する内容が書かれていると思うのだけど、釈文と訳文を写真に撮りそびれた。。。
飲食店街
博物館の外は大量の飲食店などが並んでいます。 が、閑散としていてほとんど観光客がおらずお店もほぼ閉まっていたようです。 寒いしオフシーズンだからかな。
ここからバスで宝鶏駅あたりまで移動します。 WeChatのミニアプリから乗車QRコードを設定して、無事に乗れました。都市ごとにICカードを買ったりする必要がないので旅行者としては便利。
写真は撮っていないのですが、青銅器博物館あたりがやたらと小綺麗だったのに対して、宝鶏駅駅周辺はもうちょっとガヤガヤしていて、よくある中国の地方都市、という雰囲気でした。
昼食
朝早起きで眠くてお店を探す元気がなかったので、昼食は「魏家凉皮」という、安定の(?)チェーン店らしきお店にしました。
ちなみに店内は子連れの女性が多く、その他もほとんど女性客だった気がします。
とりあえずメニューにデカデカ書いてあった「牛肉飯」を頼んでみます。 茶碗蒸しライクなものについてきた醤油には「寿司醤油」と書かれてたし、もしかして和食インスパイアな何か...???
金台観
昼食後、歩いて金台観に向かいます。
この図の下側(方角だと南側)から登ります。
なかなかの階段ですが、上に見えるのが南門で、ここがやっと金台観本体の入り口のようです。 ここには守衛さんがいて、通常は身份证を提示しますが、パスポートを見せたら無事に入れました(無料)。
「観」とは道教の寺院のことですが、ここは現役の宗教施設らしく、「未成年者は宗教施設立入禁止」という旨の看板も一部にありました*4。
霊官殿。解説パネルによると1573年建造とのこと。
玉皇殿。建物の配置だけ見ると、これが中心的な建物のようです。 ただ、礼拝者はあまり多くなくて、むしろこの後見る窑洞のような廟の方に人が集まっていました。
ガラスにがっつり反射して見にくいですが、石碑がありました。
最後の1行には「大明天順六年」と記載があり、どうやら15世紀のものらしいことが分かります。 あと、その1つ前の行には「寶雉縣」(?)と書かれており、宝鶏の地名がこの時代からあったものであることが読み取れます(たぶん)。
奥には、窑洞のような廟がいくつも並んでいました。
それぞれの洞に神像が祭られています。
更に階段を登ると、市街地を一望できます。
一番上にある書院。これはやたらと綺麗なので、たぶん近現代の建物。
夕食
引き続きめちゃくちゃ眠いので、早めにホテルに移動してゴロゴロ。
お昼に続いて、夕食も探す元気がなかったので、手近なチェーン店にします。 ということで、歩行者のdicosで。
セットの飲み物、暖かいものもあり、豆乳も選べるのがいかにも中国らしい気がします(なお、暑いすぎて火傷するかと思った。)。
食後は歩行者街を散歩。
ナツメの香りが漂うお店に行列ができていました。 旅先で行列を見るとついつい並んでみたくなってしまう性分なのですが、残念ながらさきほど夕食を食べたばかりで食欲がなかったので見送ります。
「数码衣库」ってなんだろうと思ったら、スマホカバーなどのお店でした。
翌日に続きます。 amber-hist-lang-travel.hatenablog.com
参考文献
- [1] 山本堯 (2023)「中国青銅器入門 : 太古の奇想と超絶技巧 (とんぼの本)」新潮社 ISBN: 978-4-10-602303-3