
2024年シルクロード新疆の旅18日目(2024-09-28)と19日目(2024-09-29)の記録です。 いよいよ最終日! 昨日見切れなかった新疆ウイグル自治区博物館を再び見て、本屋を除いてみたり、次の旅に向けて陸路国境越えの交通手段について下調べしたり。
今回の旅全体のまとめページはこちら amber-hist-lang-travel.hatenablog.com
前日の旅行記はこちら amber-hist-lang-travel.hatenablog.com
朝食など
ホテルに朝食がついていないので、近くのお店に向かいます。
「魔族」という一風変わった名前のお店に遭遇。
洗剤と思しき商品の容器が並んでいるので、日用品のお店とかかな。
今回の旅でここ以外でも見かけた(写真は撮りそびれた)ので、チェーン店なのかも。
通りがかった銀行では、現金の利用を促す言葉が流されてました。
がしかし、今回の旅でも現金使わなかった気がします。
昨夜見かけた煎饼果子のお店にしようかと思ったのですが、まだ開いてませんでした。
ということで、近くの蘭州牛肉麺のお店にします。
真っ赤なラー油(辣子)がなんとも魅力的。
お店の人はラー油は入れず、客が受け取り時にカウンターで自分で入れる方式でした。
ということで、少し控えめにラー油を入れます。
卵と牛肉麺で、合計17元。
ラー油とパクチーの香りが食欲をそそります。
ラー油、赤いけど見た目ほど辛くないし、むしろ香りが良いんですよね(日本の一般的なラー油と方向性が異なる気がします。)。
たまに日本の蘭州牛肉麺のお店で「ラー油、パクチー抜き」を頼む方を見かけるのですが、なんというか、だいぶ牛肉麺の良さを減じてしまうような。。。(お寿司のわさび抜きとかに近い...?)
新疆ウイグル自治区博物館
前日に引き続き、自治区博物館に向かいます。
今日は土曜日だから、外は前日にまして人が多かったです。
私は事前に予約してあったのですが、この時点で「予約は既に午後16時までいっぱい」と話している人もいました。
ということで入れない人もいたかも?
公式の解説も今日は売り切れ、音声ガイド機も全て貸出中で借りられませんでした。
出土文献の展示

前日は見そびれたのでここをまったり見ていきます。 やはり地味目な展示だからか、他のエリアに比べると人は少な目。 「有些人觉得没有意思吧」って言ってる人がいたのも聞こえました。
展示は4部構成(簡牘・帛書、紙、石刻、保存・研究)ですが、第2部の紙の文献がメインでした。(他はレプリカ多め。)
簡牘の展示は前に蘭州でもうだいぶ見たので、軽く眺めるだけにします。
蘭州の簡牘博物館を訪れた話はこちら参照: amber-hist-lang-travel.hatenablog.com 簡牘についての本のメモはこちら: amber-hist-lang-travel.hatenablog.com
ということで、メインの紙文書を見ていきます。
こちらの品はトルファンのアスターナ古墓群出土の「北凉缘禾六年翟万随葬衣物疏」*1。
随葬衣物疏とは字義通りには副葬品のリストのこと。それが転じて死者の来世の平安を願う内容が書かれるようになったそうです*2。
「〇〇一枚」「〇〇一領」とかあるのが読みとれて、品物と数量を指しているようです。ただ、5行目一番下にある「黄金千斤(?)」はさすがに盛ってるんでは?という気がします。
最後の方には「左清龍右白?前朱雀後玄武」と四神が言及され、死者の平安を願う内容なのかな、と想像されます。
こちらは「唐西州高昌县上安西都护府牒为录上讯问曹禄山诉李绍谨两造辩词事」*3という、唐代のとある訴訟を記録した文書。
内容は音声ガイド(wechatミニプログラム)によると: まず、原告(曹禄山)の兄の曹炎廷が、被告(李绍谨)に絹織物275匹を貸した後に、行方不明になったとのこと。そして、被告が原告の兄から絹織物を借りたことを認めなかったため、原告が被告に絹織物の返還を求めた、とのこと*4。
欠けてるところがあったり手書きで読みにくいところもあるので、「…禄山年卅」「二百七十五」などしか私は読めないのですが、1000年以上前の訴訟の内容が残っているのは興味深いです。
まさか原告も被告も自分たちのもめごとが1000年以上残るとは思わなかっただろうな。
トルファンのアスターナ古墓群出土の『論語』(鄭玄注)の雍也篇の残巻*5。
孔子の『論語』は様々な注釈と共に読まれることが多く、これは後漢の鄭玄がつけた注を伴うもの。
鄭玄の注は宋代には読まれなくなって散逸してしまったものの、この残巻のような出土品(主にトルファンや敦煌から)をつなぎあわせることで全体の1/3以上がわかっているそうです*6。
注の復元はもちろんですが、そもそもこれだけ昔の書物を読んできたことにも、とんでもない執念を感じます。
医学書いろいろ。
科学技術史好きな人間としては気になるトピックです。
展示されている現品は漢語のものですが、他にも様々な言語の医学書が新疆各地で出土しているとのこと。
唐代の、咳の治療のための処方を記した文献*7。
3行目下に「甘草」、4行目冒頭に「麻黄」とあるあたり、比較的馴染みのある生薬の名前が読み取れます。
ただ、乾燥した新疆の土地でもこれらの生薬が栽培できたのか、はたまた内地から輸送してきたのかは気になるところ。
乾燥といえば、やっぱり乾燥した土地柄だから咳とか呼吸器症状の悩みも多くて、この文献みたいなのが残ってるのかなー、まあでも1サンプルで過度に一般化するの良くないなー、と思ったのですが、解説曰く結論だけ見るとこれはあながち間違っていないそうです*8。
こちらは、この展示室の個人的ベストの「唐宝应元年六月康失芬行车伤人案」*9、なんと1200年前の交通事故の記録です。
2人の子供が牛車にぶつからられて怪我をし、その親が牛車を操作していた者を訴えた記録だそうです。2行目の「史拂船男金児」と「曹没冒女想子」は被害者側(史拂船の息子の金児、曹没冒の娘の想子、という意味のよう)を指しているようです。
漢語以外の文献もありました。
回鶻文字の「弥勒会見記」*10。
解説いわく、言語としては焉耆語で書かれており、中身は弥勒菩薩が衆生を救う、仏教劇?の物語を記しているそう。
中央左に穴と円形の余白があるのが気になるのですが、まず穴は紐を通すためのものだったようで、貝葉文書でよく見る形式だと思われます。 材質は紙なのに、貝葉文書の形式を引き継いでいるのは面白いです。 また、周りに余白を設けているのは、「文書を繰り返し読むと傷んで穴が広がってしまうので、それで文字が消えるのを防ぐため」という説明もどこかで読んだ気がするのですが、出典がわからないため、保留。
故宮展
この時は琺瑯工芸品をテーマにした展示がありました。 主に清代の品が中心。
こちらのように、周代?の青銅器の形を模したものが目についた気がします。
琺瑯の種類や技法の話も書いてたのですが、軽く流すだけにしました。
文物展
昨日も見たのですが、一部をもう一度見ました。 旅行記としては昨日の旅行記にまとめたので、そちら参照。 amber-hist-lang-travel.hatenablog.com
途中でやたら子供みたいな声のガイドさんがいるなーと思ったら、本当に10歳あるかないかくらいの子供がガイドをしていました。ガイド体験企画とかかな? 男の子の方は簡単な一言解説だけでしたが、もう少し年上の女の子の方はけっこう詳しめの話をしてて、なかなかすごい。
昼食
前日に同じく、博物館内のカフェにて昼食。
昨日はサンドイッチだったので、今日はベジプロフ。
レーズンが入ってるのは好み。
そういえば肉+レーズンは今回の旅では見かけてない気がします。
ウズベキスタン旅ではブハラのプロフがこのタイプで好みでした。
amber-hist-lang-travel.hatenablog.com
ミイラ展示
ここは人が多め。
ミイラというと古代エジプトのものが有名ですが、あちらは内蔵を取り出すなどの処理を人手で行って作られるもの。 対して新疆のミイラは、普通に埋葬された遺体が、乾燥した気候故に自然と腐敗せずミイラになったものだそうです。
展示されていたミイラは、時代的には先史時代から唐代?あたりのアスターナ古墓群のものまでありました。 ただ、ミイラはちょい生々しすぎるので写真は遠慮しておきました(そもそも撮影可だったかどうか未確認)。
ミイラについて、肺結核を患っていたと見られる、とか、おそらく熱中症で死亡したと見られる、などの言及もあり、やはり骨以外の組織も残っていると分かることも多いのだなと興味深かったです。
新華書店
中国の旅先では本屋を覗くようにしてるので、今回も新華書店にやってきました。
新華書店では鞄などはロッカーなどに預けるお店が多かった(万引き防止?)のですが、ここのは少し違ってました : 鞄を預けるのではなく、鞄を覆う袋をもらい、それにロック?(万引き防止タグみたいなもの)をかける、という方式でした。 確かに鞄にものを入れることはできなくなるので、これで万引き防止にはなりそう。
1階
民文图书のコーナーでは、ウイグル語だけでなく、カザフ語やクルグズ語(キルギス語)のコーナーもありました。
興味深いのが、カザフスタンのカザフ語もクルグズスタン(キルギス共和国)のクルグズ語も、キリル文字で表記されるのに対し、ここ新疆ではアラビア文字(正確には原題ウイグル語表記に用いられている改良アラビア文字?)が用いられていること。
『論語』はアラビア文字表記のタイトルがナスタアリーク体になってて読めぬ。。。
ウイグル語で書かれた様々なトピックの本だけでなく、ウイグル語の教本や、
中国語の教本もありました。
ウイグル語の教科書、買おうかと一瞬思ったのですが、テュルク系言語は日本語と文法が近いので、たぶん日本語で学んだほうが楽なんだよなー、ということで見送り。
ベストセラー?のコーナーでちょっと気になったのは、こちらの「行走中国」。中国の地理/旅行記の本ですが、ぱらぱらめくった感じでは、地域別というよりかは、「山」「大運河」などテーマ別での記述になっていました。文字メイン。
自己啓発書のコーナーでは日本語からの翻訳書も見かけました。
中でもこちらの「被讨厌的勇气」(嫌われる勇気)はだいぶ目立つ陳列になっていてびっくりでした。
歴史など(2F)
続いて2Fの社会科学コーナー。
歴史書もここにあります。
話それるけど、日本だと歴史って人文学にカテゴライズされてあんまり社会科学と明言されることは無い気がする?
歴史地理学みたいな話が好きなので、「透过地理看历史 春秋篇」とか「中国古代河流」とか、タイトルだけでだいぶ気になる。
「消失的古城」、てっきり最近の再開発で消えた古城の話かと思ったらそうではなく、清末から民国初期の都市の市井の人々の生活を描いた本のようでした。
やはり史記メジャーなようで、解説本がいくつもありました。
この写真には写っていませんが、まさかの「宫崎市定解读《史记》」(日本語からの翻訳書)もあり、びっくり。
バスターミナル+高速鉄道駅
この旅もほぼ終わりなので、あとは空港へ、となるところですが、次回の旅に向けて少し情報収集をしてきます。 次回の旅は中国新疆から国境を越えてカザフスタンに行く計画なのですが、国境越えの交通手段の詳細などを聞きに、バスターミナルなどに行きます。
なお、時系列が前後するのですが、その「次回の旅」の旅行記はこちら: amber-hist-lang-travel.hatenablog.com
BRTで移動
ということで、前日朝に引き続いてBRTで移動します。
走る道は専用レーンじゃないのでBRTと呼べないのでは?と個人的には思うのですが、この改札はBRTっぽさがある気もします(適当。)。
連節バス。日本ではあまり見かけないので、ついつい写真を撮ってしまいます。
国際バスターミナル
ということで、バスターミナルに到着。
陸路国境がない国に住んでると、国际汽车站っていう文字列の時点でワクワクします。
案内板には中国語とロシア語?があり、これも良い。
2階の国際線のチケット窓口で、アルマトゥへの路線について質問しました(あくまで2024年時点での情報です。実際に行く方は必ず最新の情報を確認してください。)
- ここウルムチのバスターミナルで買えるのは、ウルムチ出発の切符だけ。他のバスターミナル出発の切符を買うときは、その出発地のバスターミナルで買う必要あり。
- 辺境通行証は不要。パスポートさえあればOK(これは中国パスポートでも外国パスポートでも同様。)。
- 1日前までに買うのがおすすめ(当日だと満席になっていることがあるので。)
- オンラインでも購入可能。ただし、今はまだシステムが不便なのでおすすめしない、半年後には良くなってるかもね、とのこと。
ちなみに翌春に伊寧からアルマトゥへのバスに乗ったときはオンラインで購入しました: amber-hist-lang-travel.hatenablog.com
なお、ここの2階のトイレはかなり厳しいです。 個室が扉がなくて、隣の人の便器の水がそのまま流れてくるので、向きによっては他人のブツも流れてきます。。。
高速鉄道駅
お次は鉄道駅に。
窓口に並んで聞いた話だと
- 辺境通行証とかはいらないはず、パスポートとかがあればOK
- カザフスタンへの国際列車はこの時点ではまだ運行していないし、予定も不明。
結局2025年春の旅でも国際列車は運行しておらず、上記の通り国際バスで移動しました。
市街地から空港へ
移動
用事も済んだので、空港に向かいます。 フライトは翌朝なのですが、朝早いので、今夜は空港のカプセルホテルに宿泊です。
机场快线の案内板があったのですが、もう最終便が出た後とのこと(この時点で20時前。でも新疆の感覚だと現地時間18時くらいなので早すぎない?)。
ということで、気を取り直して、路線バスと地下鉄を乗り継いで空港に向かいます。
話逸れるのですが、バスターミナルと高速鉄道駅があるのに地下鉄が通っていないのは、ちょっと不便。
このとき乗ったバスでちょっとおもしろいことに気がついたのですが、乗った車両には左右両側に乗降口がありました。
なんでだろうと思ったのですが、乗り場が路肩だけでなく、上の写真のように道路中央の分離帯にある場合もあったので納得です(中国では車は右側通行)。
地下鉄に乗り換えます。
ICカードを買わなくてもalipayで乗れるのは便利。
車内の電光板の表示は中国語・ウイグル語・英語の3言語あり、ウイグル語のときだけ文字が流れる方向が逆になっていて興味深かったです(当たり前といえば当たり前なのですが。)。
空港にて
空港ではこちらのカプセルホテルに宿泊します。
チェックインでちょっと手間取ったのですが、コーナーケースすぎるので詳細は割愛。
夕飯のお店を探してたらおにぎりのお店があってびっくりでした。
しかしこれから日本に帰る身、やはり最後は新疆料理で締めようと思います。
32元で空港価格だなーと思うのですが、しょうがない。
今回の旅最後のラグマン、ということで噛み締めていただきました。
なお、辛さなし+麺少なめ、でお願いしたのですが、それでも多かったですね。あと、ピーマン?が辛いので避けて食べました。
日本へ
ウルムチ空港
翌朝9/29、上海を経由して東京に帰ります。
制限エリア内のお店、果物やドライフルーツ、ホータンの玉など、新疆らしい品物を扱うお店が多かったのが印象的です。
上海へのフライト
搭乗はバスで。
前日に予告があった通り、だいたい40分遅れで離陸しました。
まあ乗り継ぎ時間に余裕があるのでOK。
機内食は牛肉面と鸡肉饭の選択肢があったけど、牛肉麺はもう昨日食べたので、後者にしました。
鶏肉とジャガイモかな?
上海浦東空港
およそ4時間半のフライトで、上海浦東空港に到着。
まったりお昼にします。
メニュー見て「牛肉麺ってそういえば蘭州のじゃなくてこっちのもあったな」と思い出したので、牛肉麺を注文。
果たして機内食の牛肉麺がどっちだったのか気になります(というか汁物は機内食に向かなさそうだし、どっちでもなかった気もします。)。
唐辛子マークがついていたのですが、さすが上海、ほとんど辛くないです。
ただ、さすが上海の空港、お値段69元となかなかのお値段です。
上海の空港で地味に感動したのが、トイレがTotoのウォシュレットだったこと。 18日ぶりのウォシュレットで、一瞬もう日本に帰ってきたのかと思いました(気が早い)。
この後、羽田へのフライトで帰国しました。 機内は日本語話者多めだったのが印象的でした。
以上!
参考文献
- [1] 關尾史郎 (1998)「西域文書からみた中国史 (世界史リブレット ; 10)」山川出版社 ISBN:4-634-34100-X
- [2] 橋本秀美(2009)「論語 : 心の鏡 (書物誕生 あたらしい古典入門)」岩波書店 ISBN:978-4-00-028294-9
*1:展示品番号0511
*2:参考文献[1]p.20-p.21「随葬衣物疏とは本来は、死者が埋葬されるさいに身にまとっていた衣服やアクセサリー・調度品のたぐいを列挙した、いわば副葬品リストともいうべきものだが、中国仏教の普及にともなって、しだいに死者の来世での平安を祈願する意味をあわせもつようになったものである。」
*3:展示品番号 0518
*4:wechatミニプログラム「新疆博物馆」中の解説「文书中记述了原告曹禄山向西州长史控告被告李绍谨:在弓月城(今伊宁市附近)向其兄曹炎廷借了275匹绢(丝织品),从弓月城前往龟兹(今库车县)贸易。其兄曹炎廷也带着绢、牲畜和其他财物与李绍谨一同前往。但后来只有李绍谨一人到达龟兹,其兄去向不明。李绍谨就像赖账,不承认借绢之事,曹禄山因此与李打架,并且告之官府。高昌县经过多次审讯查实,李绍谨终于供出实情并答应清还本利。」
*5:展示品番号 0524
*6:参考文献[2]p.44-p.45
*7:展示品番号0527
*8:wechatミニプログラム「新疆博物馆」中の解説「从吐鲁番地区出土医方中可见,润燥以及解决肺气上逆引起的咳嗽居本地医疗之重。」
*9:展示品番号0528
*10:展示品番号0531


























































































































































































































































































































