世界史ときどき語学のち旅

歴史と言語を予習して旅に出る記録。西安からイスタンブールまで陸路で旅したい。

2023年冬 西安と蘭州の旅 3日目 : 蘭州観光(街歩きなど)

2023年冬 西安と蘭州の旅3日目(2023-12-15)の記録です。 この日は蘭州の街中をぶらぶら観光します。 前回9月に来たときは博物館だけで通り過ぎてしまったのですが、思った以上に見どころがいくつもあって魅力的な街でした。 とりあえず朝から食べる蘭州牛肉麺は最高なのでおすすめ。

今回の旅全体のまとめはこちら amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

前日の旅行記はこちら amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

朝食

朝起きたら、なんとうっすら雪が積もっていました。 気温が低くて雪がサラサラ(だしそもそも量が少ない)だからか、「溶けて凍結してツルツル」といった状況にはならなくて助かりました。

とはいえ、そこそこ滑ります。右の写真のスロープの部分とか、本来の滑り止めの意味が雪で埋もれてなくなってました。 念のため小股で歩いたのですが、現地の人は小走りに駆けていく人もいてさすが。

ホテルに朝ご飯がなかったので、蘭州らしく(?)朝から蘭州牛肉麺を食べます。 向かったのはホテル近くの、高德地图で調べて良さそうだったこちらのお店。

席の方の写真は撮ってないですが、朝からたくさんの人で大賑わいでした。 平日だし、多くの人は地元の方かな。 日本だと朝食を外で食べる習慣も朝から麺を食べる習慣もあまり一般的じゃない気がするので興味深い。

食券を買って、奥のカウンターで店員さんに渡します。 テイクアウトしている人もいました。

麺待機中。 立ち上るスープの香りと、赤いラー油の見た目がなんとも食欲をそそります。 動画は撮りそびれたのですが、目の前でパクチーやラー油を手際よく盛り付ける様子を見るのも好きです。

ということで、お待ちかねの牛肉麺。肉と卵がついてくるセットにしました。これで17元。

パクチー、ラー油、スープのスパイスと、様々な香りが渾然一体となっててほんとに美味しいです。 日本のラーメンが旨味重視だとすると、こちらは香り重視と言えるかもしれません。 そういう意味では、昨日のお店は葉ニンニクが強すぎた感があって、個人的には今日のお店のほうが好みかな。 朝から美味しいものを食べて身も心も暖まりました。

お店の前にあった面白い標語「不要打架 打输入院 打赢坐牢」。それっぽく訳すなら「喧嘩はやめよう 負けたら入院 勝っても刑務所」とか…?

いったんホテルに戻ってから、歩きで移動します。

こういう景色を見ると、蘭州は都会だなーと感じます(前回がっつり街歩きしたのが武威の街なので、比較対象が武威。)。

府城隍庙

入場無料。20分くらい滞在しました。 城隍廟は、どうも都市の守り神としてその土地ゆかりの人物などを祭る廟のようです*1

こちらの廟で祭られているのは、楚漢戦争の時代の漢の将軍、紀信(現在の甘粛省天水の人)とのこと。 廟は北宋時代創建にされ、現在の建物は清の乾隆年間の18世紀後半の建築とのことです*2

入り口の牌楼。 いつも思うけど、牌楼って出入りを制限する門としての役割を果たせないので、完全に飾りのはずで、どういう経緯でできたのか気になります。 あと、斗栱(組物)をここまで何段も重ねるのも日本ではあまり見ない気がします。 東アジアの伝統木造建築はかなり類似性がある一方、こういった地域ごとの違いを詳しく見ていくのも面白そう。

入ってすぐの中庭、スローガンまみれで笑いました。 右側のスローガンは、旅先で休日を過ごす労働者の心にくるものがあります。

その次の中庭。 バドミントン(?)のネットが貼られていたり、卓球に興じる人がいたり。

ちなみに写真は撮りそびれたのですが、廟の敷地内には奇石や、置物いろいろ、古いコインなどを扱うお店がいくつも入居していました。 もしや今はもう廟としては使われていないっぽい?

煉瓦の壁に木の組物というのも中国らしいですね。 日本の伝統木造建築(寺社など)だと、煉瓦は使わず、土壁の上に漆喰を塗る印象があります。

こういうの好き。

一通り見たので、次の目的地に移動します。

途中で通った张掖路步行街。 飲食店が数多く立ち並んでいます。

马子禄牛肉面もありました。 日本(神保町)にも支店(?)がある有名店です。 思った以上に大きくて驚きました。 せっかくなのでここで食べていきたいところですが、まだお昼には若干早いので先に進みます。

张掖路步行街を北に抜けると、黄河の川辺に出ます。 写真左に見える橋が次の目的地の中山橋です。 ちなみに写真で対岸に見えるのはその次に行く、白塔山公園。

黄河鉄橋(中山橋)

1909年完成で、もう100歳を超えるとのこと。 なんと、この橋ができるまで黄河本流には常設の橋がなかったそうで、記念すべき黄河の第一橋、という位置づけのようです(要出典。)。

「中山橋」の文字の下あたりで記念撮影する人が多く、上の写真を撮るまでそこそこ待ちましたw 「写真撮ってもらえませんか?」と2組くらいにお願いされて撮ったり。

現代の橋からすると、鉄骨の太さも、橋の道路の幅も、どちらも細い印象を受けます。 あと、遠目に見たときはアーチ橋かと思ったのですが、やたらとカクカクしてるなー、と不思議な印象を受けます(あとで博物館で伏線回収予定。)。

なお、100年以上経った今も、歩いて対岸まで渡ることができます。

北岸まで渡ったところ、石碑がありました。

冒頭には「創建蘭州黄河鉄橋碑記」とあり、

最後の1行には「大清宣統元年」とあります。

他にこれを眺めている人は見かけなかったので、ちょっとした発見をした気分になって嬉しい。

鉄橋の来歴などが書いてあるんだろうなー、読みたいなーと思いつつ、読解する力がないので写真だけ撮って次に向かいます。

白塔山公園

中山橋を渡ってすぐのところ(上の写真)から登っていきます。

入場無料。開園時間は右の写真参照。 左の写真からも分かる通り、いろいろな施設が点在しています(というかどこまでが「白塔山公園」の範囲かよくわからない。。。)。 今回は白塔寺まで登り、ぐるっと回って蘭州碑林に寄ってから降りてきました。所要時間はだいたい1.5時間くらい。 左の方の文溯閣(四庫全書を所蔵)も興味があったのですが、遠いのでパス。 ちなみに「こんなところに四庫全書あったっけ?」と思ったら、もともと瀋陽にあったものが中ソ対立の煽りを受けて疎開したものという話を見ました*3

斜面に寺院建築などが点在します。

道は舗装されていますが、そこそこの高低差を登ります。 気温-10℃~-5℃くらいで最初は寒いなーとか言っていたのですが、日も出てきて斜面を登っていくので、一気に暑くなり、途中からダウンコートを脱ぎました。

また、雪があまり積もらなかったのか、はたまた綺麗に除雪されていたのか、地面に雪がほとんど残っていなくて助かりました。 急斜面が多いので、雪が残ってたらたぶん途中で帰ってたな、これ。

塔寺の白塔。現存のものは15世紀半ばに建てられ、かつては白く塗られていたそうです*4

と、歴史的な建造物もありますが、今回の主なお目当ては、上からの蘭州市街地の眺め。 蘭州が、山と山の間、黄河の両岸に広がる細長い街であることがよくわかります。

蘭州碑林は現代の石碑が多いようだったので、軽く見るだけにします。 「大明宣徳四年」と書かれた大きな石碑もあったのですが、やたらと綺麗だったので複製品かなー。。。

帰りはロープウェイで楽しようと思ったら運行していなかったので、徒歩で下ります。

季節柄観光客が少ない上にここはマイナールートだったようで、野犬の群れと遭遇して焦りました。 が、小さめの犬種で、人を見ると逃げてくれたのでセーフ。

蘭州黄河橋梁博物館

中山橋の方に向かう途中、上の博物館が見えたので、寄ってみることにします。 博物館の1階と2階は劇や俳優などについての展示で、その上に橋梁博物館があります。入場口は共通、入場無料。

展示は大雑把には2つに分けられるようで、前半は中国各地や世界の橋の紹介、後半は黄河鉄橋(中山橋)についての展示。

展示はパネルや模型が中心です。

中山橋ができる前は、浮橋、筏、さらには氷結した川面を渡っていたとのこと。 川面の氷結を確認するために、命綱をつけた人間を渡らせて氷が割れるかどうか確認していたそうです*5。過酷や。。。

中山橋は西洋の技術者と共同で建造されたもので、なんと左の写真のとおり材料もドイツから海路を経由して輸送したとか。

手前左の人物は、橋の建築を清側で主導(?)した陝甘総督の升允。

1909年に開通した時の様子。 よーく見ると、左上の写真では駱駝が橋を渡っていて、ここ蘭州で駄獣として駱駝が使われていた例として興味深いです(もっと西の方だけかなと思ってた。)。

あと、橋の形が今と異なり、典型的なトラス橋の形をしていることが見て取れます。 ここでようやく伏線回収なのですが : 中山橋の形はアーチ橋にしてはやたらと角ばってるなと思ったら、もともとトラス橋として設計され、後になって上に部材が追加された今の形になったそうです*6

あまり大きい博物館ではなく、30分ほどの滞在で一通り見れました。 中山橋とセットで行くと知識も深まって楽しいのでおすすめ。

再び中山橋を渡って、南岸に戻ります。 12月半ばでも黄河は凍る気配もなく滔々と流れてるけど、昔はこれが氷結して表面を渡れたのかな...?

昼食

张掖路步行街に戻ってお昼にします。

马子禄が気になっていたのですが、このとき既に14時半近くで閉まっていました。

ということで、こちらの肉まんのお店にします。 清真(ハラール)と書かれているだけあり、肉まんのお肉は豚肉ではなく牛肉です。

メニューが1籠(右の写真)単位で書かれていたので1籠で注文しました。これで24元。 ただ、よくよく見たら1個単位(ただし5個以上)で注文できるようです。 周りの人の注文を見た感じ、包子を減らして胡辣汤やお粥と合わせるのが正解だったっぽい。 あと、「素包」は具が「韭菜+豆腐+蛋清+银耳」の組合せで気になるので、試してみたかったなー。

ほかほかの肉まんを齧ると、中はお肉ぎっしり。 味も食べ応えもばっちりでした。

黒酢とラー油が机においてあって、他のお客さんを見るとつけて食べるようなので、私も試してみました。 つけなくても美味しいけど、つけると味に変化があってこれもよい。

お店から出るときに気づいたけど、清真(ハラール)らしい注意書きもあります。

バスに乗って、次の目的地に移動します。

兰州水车博览园

  • 入場無料。
  • 現地にあったパネルによると、6:00-24:00まで開いているそうです。

巨大な蘭州水車。 かつて蘭州の灌漑などに用いられていたそうです*7(この公園にあるものはおそらく復元品。)。 蘭州水車は写真右に映る人と比べると大きさがよくわかります。

近くで見るとひときわ大きい。 蘭州水車の直径は約16mで、1952年の段階でも252基の水車が黄河両岸に並んでいたそう*8で、さぞ壮観だったろうと想像されます。 写真残ってないかなー。

ちなみに、黄河の流れをすぐ近くで眺めることもでき、思ったよりも速い流れと多い水量が印象に残りました。

水車にちなんだ(?)社会主義革新価値観のオブジェ。 なかなか芸が細かい。

他にも様々な水車が展示されています。 ただ、残念なことにこのときはどの水車も動いていませんでした。 警備の方に聞いたら「冬は止めてる」とのこと。(最高気温が氷点下で凍るし、言われてみれば当たり前や…。) 動くところが見てみたかったなー。 これを読んだ方は冬以外の時期に行きましょう。

現地の解説パネルによると、蘭州水車は明代は16世紀半ばに、銅像の人物、段続が発明したそう。

ただ、シリアのハマーの水車も似たような構造であちらの方が古かったと思うので、本当に独立に発明されたのか、どのような点が異なるのかなど気になります。 前近代の農業や技術の歴史にはかなり興味があるので、詳しく調べたい。

ホテルへ移動

バスに乗り、ホテルに移動します。

途中、西关清真大寺(モスク)に寄り道。ただ、あまり観光客向けではなさそうだったので、外から写真を撮るだけにしました。

ちなみにそのすぐ隣は巨大な大学病院。蘭州は都会だなー(本日2回目。)。

再びバスに乗って、西に移動します。 翌日は蘭州西駅から電車移動なので、街の西側にホテルを取ってあります。

日本ではあまり見かけない連接バス

夕食

昼食の時間が遅くしかも量も多かったので、夜は軽めに済ませます。

羊肉串と牛奶鸡蛋醪糟、32元。

翌日に続きます。

*1:中国大百科全书やwikipediaの情報なので、要きちんとした出典。

*2:以上、現地の解説パネルより。

*3:ただし、これはwikipedia情報なので、要出典。

*4:麓の解説パネルより。

*5:展示の再現CG。

*6:展示によると、1954年にこの工事が行われたとのこと。

*7:現地の解説パネルより。

*8:現地の解説パネルより。