世界史ときどき語学のち旅

歴史と言語を予習して旅に出る記録。西安からイスタンブールまで陸路で旅したい。

ウズベキスタン旅行のためにウズベク語を勉強した話(教科書など)

2024年のゴールデンウィークウズベキスタン旅行にあたり、あまり英語が通じないと聞いて、ウズベク語を勉強していきました。

この記事では、勉強に使った本や、現地でウズベク語を使ってみてどうだったかを書いてみます。

ウズベキスタン旅行そのもののまとめはこちら amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

注意点

  • 以下の教材に対するコメントは、あくまで初心者(しかも誤りに気付く機会の少ない独学者)目線の主観的なものです。
  • 以前トルコ旅行のためにトルコ語を少しかじったことがあります(下記記事参照)。ウズベク語とトルコ語は似ているので、その知識が今回の学習でもある程度活用できています(少なくとも「テュルク系言語を学ぶのは初めて」という状況よりはハードルは低かったと思います。)。

amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

読んだ本や教材など

ニューエクスプレス+ ウズベク

www.hakusuisha.co.jp

語学を嗜む方々にとっては言うまでもないであろう、白水社の有名シリーズの1冊です。 ちょうど2024年1月に発売されたので、4月末の出発にあわせて勉強することができました。 ニューエクスプレス+らしく、会話、文法、語彙がバランスよく織り込まれていると思います。 ラテン文字表記です。

ただ、ニューエクスプレス+トルコ語と比べると、情報密度が高かった気がします(カバーした文法範囲はウズベク語の方が多いはず。)。 トルコ語を少しかじったおかげでハードルが低かったのですが、テュルク諸語の最初の本としてこの本に手を出してたら挫けていたかもしれません(←

また、「会話、文法、語彙がバランスよく」と書いたのですが、私は先に文法の全体像を眺めてから会話や文章を読むほうが性に合うので、先に全部の文法部分だけを拾って下のようにmarkdownのノートにまとめ、その上で最初から会話部分+語彙をさらって問題を解く、と2周する読み方をしました。文法ノートを書くときは、後述する「大学のウズベク語」も参考にしました。

2周目で会話文を読むときも「読むだけでは身に着いた気がしないなー」と感じたので、本文を書き写しつつ接尾辞などを区切って逐次訳をつけたりしました*1

大学のウズベク

wp.tufs.ac.jp

会話文などはほぼなく、文法とその解説のための例文が主です。 巻末にはウズベク語→日本語、日本語→ウズベク語の基礎語彙集があり、また接尾辞の一覧も充実していました。 キリル文字ラテン文字が併記されています。

通読したわけではないのですが、上記の文法ノートを書くにあたって頻繁に参照しました。 ニューエクスプレス+に比べて文法毎の例文が多いので、ニューエクスプレス+だけではよくわからなかったときなどにこちらの例文を見て腑に落ちたこともあり、かなり役に立ちました。

本当は演習問題もきちんと解きたかったのですが、知らない単語が多かったので途中であきらめました。 ということで、欲を言うと(少なくとも演習部分については)最小限の単語に絞って文法に徹したほうが使いやすかったかもしれません*2

辞書

「辞書」と書いておいてなんですが、辞書はほぼ利用していません。初歩の内容なので、「ニューエクスプレス+ウズベク語」「大学のウズベク語」の巻末の単語リストでほぼ事足りました。

以下の"Turkic Language Dictionaries"も少し利用することもありました。(上記の単語リストに載っていない単語を調べたり、多義的な単語の意味一覧を調べたりするときなど。) turklehceleri.org ただ、web上でたまたま目に着いたものなので、信頼性などについては私は評価できません。

実践編

以上の通り予習した上で、実際にウズベキスタンに行ってみてどうだったか、つらつら書いてみます。 なおここまで書いておいてなんですが、ぶっちゃけると、メジャーな観光地を周る限りは、ウズベク語ができなくてもあまり困らないと思います。

  • 主な観光スポットや海外からの観光客向けのレストランでは、初手から英語で話しかけてきてくれます*3。ただし、レストランでは全ての店員が英語を話せるわけではなく、「お店に1人は英語が話せるスタッフがいる」という状態のところも多かったです。ということで、ウズベク語で注文/料理についての質問/会計などできるとスムーズなことが多かったです。「これは羊肉ですか?」「量を半分にしてください」「スプーンをください」みたいなフレーズを使った記憶があります。
  • タクシー運転手の方は英語が話せる人はほとんどいませんでした(タシュケントで1回だけ当たったことがありました。)。ただ、Yandex Goを利用したので、会話ができなくても問題ないことが多かったです。
  • 私はキリル文字は学んでいなかったのですが、街中の看板やレストランのメニューなどは(きわめて古いものを除くと)概ねラテン文字表記だったので問題ありませんでした。例外として、レシート類はなぜかキリル文字表記が多かった気がします。
  • 数詞と値段について : ウズベキスタンの通貨単位はやたらと大きいのですが、だいたい後ろの1000(ming)を省略することが多かったです。1000スムで12円くらいなので、よっぽど高額な買い物をしない限りは、1~999まで分かれば十分でした。(と言っても、英語or電卓で示してくださることが多いですが。)
  • こちらから話しかけるときはなるべくウズベク語にしたのですが、何度か"O'zbekistonda ishlaysizmi?"(「ウズベキスタンで働いてますか?」)"と言っていただけました。お世辞だとは思うけど、これは嬉しい。ただし、ウズベキスタンで生まれ育ったからと言って全員がウズベク母語話者とは限らないので、要注意*4
  • ヒヴァでは週末にあたったのでウズベキスタン国内の旅行者が多く、少年少女たちからの「一緒に写真撮ってください!」というイベントが頻発しました*5。英語で外国人観光客と会話したい少年少女 vs. ウズベク語を現地で使ってみたい私...とはならず、少年少女の英語のほうが私のウズベク語より数段上手いので、英語での会話に落ち着きました。ただ、ウズベク語で二言三言話すとウケが良かったです。

余談 : トルコ語との比較

以前トルコ語を少しかじったので、比較して気になったことなどをメモしておきます。 ただ、私は語彙力は大してないので、あくまで初歩的な文字と発音の話だけです。

  • トルコ語には母音調和がありますが、ウズベク語には母音調和がありません。母音調和がない方が一見すると覚えやすくて良い気もするのですが、実際に発音しようとすると母音調和がある方が楽な気がします。特に円唇母音/非円唇母音の切り替えが頻繁にあるとなかなか大変。
  • 短母音がトルコ語は8種類、ウズベク語は6種類とやや少ないです。ただ、トルコ語の母音は広/狭、前舌/後舌、円唇/非円唇の2 x 2 x 2 = 8で対立関係が明瞭で理解しやすい気もします。どなたかウズベク語の母音のvowel chartをご存じでしたらぜひご教示いただきたく。。。
  • ウズベク語の方が、文字表記と発音の不一致が起こりやすい気がします。具体的には、iは「イ」と読むこともあれば、いわゆるあいまいな「ウ」に近い読み方(トルコ語だとıかな?)をすることもありました。
  • ウズベク語の方が、のどを使う(?)子音が多い気がします。q, x, g'あたり。

*1:interlinear glossingと言うらしい?

*2:と書いてみたのですが、こうなると別の教材で語彙をさらうことが前提になるので、self-containedからは程遠くなりますね。

*3:一部にロシア語で話しかけてくれるレストランもありました。

*4:特に、ロシア系っぽい方には何語で話しかけるかは少し迷いました。私はロシア語はできないので。。。

*5:たぶん東アジア人が珍しいのだと思います。イランでもかなりありました。