世界史ときどき語学のち旅

歴史と言語を予習して旅に出る記録。西安からイスタンブールまで陸路で旅したい。

2023年 河西回廊の旅 7日目 : 嘉峪関観光と嘉峪関から敦煌への移動

2023年シルクロード河西回廊の旅7日目(2023-09-20)の記録です。 この日は嘉峪関の魏晋南北朝時代の墓を見学し、敦煌に移動します。

今回の旅全体のまとめページはこちら amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

前日の旅行記はこちら amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

朝食

前日と同じお店で朝食をいただきました。 肉まんに豆腐脳、あと油条も追加して、合計で8.5元でした。

新城魏晋墓

バスが出ていないので、タクシーのチャーターを前日のうちにお願いしておきました。 乗っている間にタクシーの運転手さんから聞いた話:

  • 嘉峪関市は1960年代頃にできた。鉄鋼業が主産業。
  • ぶどう畑やワイナリーもあり、観光地にもなっている。
  • 雨は少なく、一夏に軽い雨が降る日が数日くらい。
  • 主食は小麦だけど、今は米も食べる。小麦は「拉条」(発音はlatiao。たぶんこの文字?)に加工して食べるのが主流。

市街地から魏晋墓まではだいたい30分近くで着きました。

入場料は31元でした。特に予約せずに行って入れました。 というか、前日の長城関連の観光地に比べると観光客ははるかに少なく、私以外には1グループ3人くらいしか見かけませんでした。

なお、通常は解説員による解説をお願いできるらしいのですが、この日は担当者不在でした。

展示

まずは入場ゲート近くの展示室に。 1室だけの小さな展示です。ちなみに私が来たときは他に誰もいなかったので鍵がかかっていて、警備の方に声をかけて開けていただきました。

様々な副葬品なども展示されているのですが、写真中央の木棺が一番目を惹きました。1000年以上前の木製の棺がきれいにそのまま残っていることに驚きを禁じえません。

複数の木材を組み合わせて棺の形にしている様子が見て取れます。

そして棺の蓋には絵が描かれていました。 絵は湾曲した板のくぼんだ側に描かれていたので、おそらく棺の内側を向いていたものかと思われます。 絵柄は人の上半身と蛇(龍?)の下半身をした姿の何か。古代中国神話に登場する者でしょうか(伏羲や女媧がこの姿で描かれていることが多いと聞いた記憶があります。(要出典。))。

こちらはレンガ。左下のものの模様は鳳凰でしょうか。

なお、墓室の再現模型(たぶんほぼ実物大)もあり、中に入ることもできました。

展示を一通り見たので、墓そのものに向かいます。 展示室からは少し離れていて、私はタクシーに乗せてもらって移動しました。

一見何もない大地が広がりますが、地下には複数の墓があり、写真中央の建物の地下のもの(確か6号墓)は見学することができます。 内部は写真撮影禁止でした。 確か大きな荷物は持ち込めなかったと思います(バックパックはタクシーに置いてきました。)。

壁には絵が描かれたレンガがいくつも(ざっと数えて50~80個くらい?)はめられていました。 絵の内容は農業や家畜の解体、料理や食事など日常風景が多く、史書などからはわからない往時の日常生活を知るための貴重な史料になるのではないかと思います。 参考文献[1]では、敦煌(というよりも広く中国西北部?)の食文化に論じるにあたり、これらの壁画が多数紹介されていました。 また、絵は着色されており、炎や血などを表わすために赤系統の色が用いられているようでした。

写真撮影禁止だったので、壁画の様子については前日の長城博物館の展示などを参照ください。

当時のメモによると :

  • 3つの部屋からなり、それぞれを通路がつなぐ構造になっていました。一番手前部屋は左右にとても小さな耳室がありました。一番奥の部屋以外は壁画が描かれたレンガが多数壁にはめ込まれていました。
  • 一番手前の部屋の壁画には、主に農業の様子や、家畜、屠殺などが描かれていました。
    • 牛耕の様子の絵が3枚くらい。桑の葉をとる様子が2枚(後から来たグループのガイドの話で桑の葉をとっているということを知りました)、豚の屠殺が3枚くらい。屠殺の絵では、豚を乗せた台の下に地を血入れる容器がある様子まで描きこまれています。
    • 家畜は馬、豚、ヤギ?、鶏など。
    • 鳥の毛を抜いている様子や、腊肉らしきものをつるす様子を描いたものもありました。
  • 2番目の部屋は、左右両面に5×5の壁画があり、料理や食事の様子が主に描かれていました。
    • 入って左側面は女主人の生活、右側面は男主人の生活、と描き分けられているようです。
    • 両面とも、フォークのような器具が描かれていました。フォークが壁にかかってるときは何も刺さってないように見えましたが、別の場面では何かが刺さっているように見えます。これが羊串の起源だそうです。「羊串」の図は3枚くらいありました。前日の羊串のお店のナプキンの箱に描かれた図案はこれを基にしたしたもののようです。
    • 壁の両側いずれにも、2本足の鍋のようなもので調理をしている様子も描かれていました。鍋の下のぐるぐるはたぶん火を表している...?
    • 食事の風景と思しき場面では、主人(大きく描かれている)は床に座っており(正座?)、椅子は見当たりませんでした。
    • 右側面の上段は騎馬の図や、笏をもった図など。また、右側面最下段には、尺八のような笛と阮咸のような弦楽器の演奏が描かれていました。

個人的には、前日の長城などの観光地よりも遥かに感動しました。 時間を忘れて見入っていたのですが、警備の人に「あまり長時間いると壁画にも良くないよ」と言われたので出ました(たぶん30分くらいいた気がします。)。 仰る通りなので申し訳ない。。。

写真と解説を載せた本が売られていたので、176元とそこそこのお値段しましたが、思わず買ってしまいました。

昼食

タクシーに乗って市街地に戻ります。タクシーチャーター代は、合計で120元でした。

前日に羊串を食べたばかりなのですが、この日のタクシー運転手さんからも「嘉峪関と言えば羊肉」と言われたので、運転手さんにおすすめのお店を聞いて行ってみました。

店の扉が開いてたので店内に入ったのですが、やたら人が少ないなと思ったら「12時から営業開始だから、座って待っててね」言われました。すみません。。。 12時を回ったころから、平日昼なのに人が次々と入ってきていました。

羊肉も美味しかったのですが、右のモツ(羊肚)はお酢(たぶん)の酸味とニンニクの香りが効いていて、とっても美味しかったです。 羊串と言えばクミンに唐辛子とばかり思っていたのですが、バリエーションがあって良いですね。

野菜も忘れずに。 あとは白米も頼みました。白米はなぜか店の外から運んできて、その場で会計を求められました。どうも違う店のを融通したっぽい...?(結局最後にまとめて会計にしました。)

合計65元でした。

敦煌への移動

昼食も食べたので、この日は後は高速鉄道(D2749便)で敦煌まで移動するだけです。

嘉峪関南駅

路線バスで嘉峪関南駅に移動します。

2日前の記事にも書いた通り駅の周りにはお店はほぼないのですが、待合室内には売店ハンバーガー屋がありました。

ところで中国で見かけるハンバーガー屋は、牛肉のパテよりフライドチキンを挟んだものが多い気がするのですが、気のせいでしょうか?

改札は出発時刻20分くらい前に開始しました。

乗車

この旅で5回目の鉄道移動なので、そろそろ慣れてきました。 なお、このときは嘉峪関南駅から敦煌へ乗り換えなしで行ける便だったのですが、時期によっては見つかりませんでした。 その場合は(1)嘉峪関から鈍行で敦煌に向かう、(2)高速鉄道で柳園南駅まで行きそこからバスで敦煌まで移動する、のいずれかになる気がします(ただし(2)のバスは1時間以上かかったはず。。。)。

この日は平日だったのですが満席のようで、デッキで立つ人などもいました(座席なしの切符が販売されているということ...?)。

ところどころ、巨大な風車の風力発電所が何箇所かあったのが印象に残っています。

まったいらな砂漠が広がるかと思えば、

ところどころ岩っぽいところもあり、意外と変化もありました。

途中から時速150kmくらいと遅めになった気がします*1

敦煌駅から敦煌の市街地まで

さて、敦煌駅に着いたものの、ここからが大変でした。 敦煌駅から敦煌の市街地には距離があるのですが、バスはすぐに満員になって行ってしまいました。しかもこれが最後の便という声も聞こえました。

で、タクシーも次々来るのですが、なかなか捕まりません。 というのも、そもそも乗客の数が多くてタクシーの数が足りないのと、、、タクシー乗り場にタクシー待ちの列ができていたのですが、その列に並ばずにタクシーを乗り場より手前で捕まえる人がたくさんいたためです。。。

「まあ時間に余裕はあるし」と気長に待ち(小心者なのでタクシーを奪えなかっただけという説もある)、他のお客さんと相乗りで乗せてもらいました。市街地中心部のホテルまで25元でした。

乗車中、「翌日は玉門関と陽関に行くつもり」という話をしたら、運転手さんから「チャーターする?」と訊かれたので値段(300元とのこと)を確認してお願いすることにしました。

夕食

ホテルの近くでハンバーガー店を見かけたので、ちょっと趣向を変えてみようかなと思い、夕飯はここで。

バーガーとロールと飲み物のセットで17元でした。 頼んでから気づいたのですが「香辣鸡排」と書いてあり、意外と辛かったです。

翌日に続きます。 amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

参考文献

*1:車内の液晶画面に速度が表示されていた記憶があります。