世界史ときどき語学のち旅

歴史と言語を予習して旅に出る記録。西安からイスタンブールまで陸路で旅したい。

2023年 河西回廊の旅 9日目 : 敦煌観光(莫高窟など)と蘭州への移動

2023年シルクロード河西回廊の旅9日目(2023-09-22)の記録です。この日は主に敦煌莫高窟を観光しました。

今回の旅全体のまとめページはこちら amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

前日の旅行記はこちら amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

朝食と移動

この日は時間に余裕があったので、朝食はまったりとホテルでビュッフェ。

食後、敦煌莫高窟数字展示中心にタクシーで向かいます(ホテルのスタッフ曰くバスはないそう。)。

莫高窟

見学手順は少しややこしいので、別記事にメモとしてまとめました amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

石窟

石窟は公式ガイドを伴って見学します。石窟内は撮影禁止なので写真はありませんが、ガイドさんから聞いた話などは以下の通り :

  • 壁画の鮮やかな青は、主にラピスラズリで描かれたものとのこと*1
  • 石窟と壁画は唐代のものが主。ただし、塑像は後に修復を受けたものが多い。前室の壁は北宋のものが多い。
  • 前室の壁画には寄進者の姿が描かれたり、名前が書かれていたりもする。宋代の寄進者と元代の寄進者とが描かれたところでは、服装の違いが印象的。特に帽子とか。
  • 壁画には、描かれた場面や佛の名前が書き込まれているものも多く、何が描かれているかを同定する際に役立つ。
  • 南北朝時代の石窟の壁画には、山海経の怪物や西王母(鳳凰の上に乗った輿)などが描かれている。また、飛天も筋骨隆々とした男の姿で描かれている。これらは、唐代のものとは様式が異なる。

博物館

敷地内にはいくつか博物館や展示がありました。

藏经洞陈列馆

「藏经洞陈列馆」はチケット確認されるエリアの中にあり、ガイドさんに頼んだら見学ルートに組み入れてもらえました。 敦煌文献がテーマで、展示は主にパネルとレプリカです*2。でもレプリカでも面白い。

たとえば、これは唐代の九九表のようです(もちろんレプリカ)。 本で読んで存在は知っていたのですが*3、どういう形式で書かれているかはきちんと知らなかったので、実際に(レプリカですが)眺めてみると興味深かったです。

こちらは「敦煌文献には、いろんな文字で書かれたものがあるよ」というパネル(もちろん、比率としては少ないとは思いますが。)。 言語や文字が好きな人間としては気になる。

美術館

こちらはチケット確認があるエリアの外なので、ガイドツアー解散後に自由に見学できます。

石窟の形の解説や、

壁画のレプリカなどがあります。こちらは撮影自由。

往時の日常生活が垣間見られる絵を集めた展示もありました*4

敦煌石窟文物保护研究陈列中心

こちらもチケット確認エリアの外。

パスパ文字! 他にも、西夏文字モンゴル文字、シリア文字などの文献もありました。 いずれも西夏時代以後のもの。

塑像の作り方の解説。 ちなみに敦煌石窟の仏像が彫刻ではなく塑像なのは、ここの石が彫刻に向かない材質のためだそうです*5

石窟の実物大(たぶん)レプリカもあり、中に入ることもできたのですが、写真撮影禁止でした。

移動

一通り見学し終えて、敦煌莫高窟数字展示中心(市街地から遠い場所ですが、タクシーが何台か止まっていました)からタクシーで市街地の敦煌博物館に向かいました。

お昼を食べそびれたので、日本から持って行った羊羹で済ませました。 たぶん莫高窟のレストランで食べておけばよかったと思います。

敦煌博物館

予約無しで行きました。 入り口では紙のチケットは出せなかったので、出口の方でパスポートを見せて紙のチケットを入手しました。ついでに荷物もここに預けておきました。

このときは体調がいまいちでざっとしか見れなかったのですが、それでも面白く感じられるものがいくつもありました。

漢代の品々いろいろ。右端のものは石臼だそうです。 穀物を粉にひいた後、どう調理して食べていたのか気になります。

靴底。音声ガイドによると、麻と綿が使われてるそうで、文献上の記載よりも綿の利用が早かったことがわかった、とのことです。 こういう、「伝世文献と出土品を突き合わせて歴史を明らかにする」話が好き。

魏晋南北朝時代の墓から出土した画像磚。嘉峪関で見学した墓のものと似ています。 こういう日常風景が描かれたものには一段と興味を惹かれます。

他、仏像などもあったと思うのですが、仏像は莫高窟でお腹いっぱいだったのでスキップしました。

夕食

タクシー移動。

夕食は再び羊串。嘉峪関で行ったときと同じ系列のお店にしました。

ちょっとおなかの調子がいまいちだったのと、この後夜行列車に乗るので、辛さ控え目にしていただきました。

夜行列車で移動

駅まで

夜行列車*6に乗って蘭州方面に移動するため、駅までタクシーで向かいます。 このとき乗ったタクシーの運転手は若い方でアニメの話題を振られたのですが、「実はアニメほとんど観ない」と返したら、「え、せっかく日本に住んでるのに!?」と驚かれました。 あと、好きなアニメのタイトルで"mingren"と言われて最初わからなかったのですが、どうもナルトのようです。ググってみたところ、どうも「鸣人」と書くよう。

夜行列車

駅には早く着いたのですが、歯磨きしたり水を買ったりしたらちょうどよいくらいの時間になりました。

いよいよ乗車!

日本だとなかなか寝台列車に乗る機会はないので、思わずワクワクしてしまいました。

今回は軟臥と呼ばれる席を予約しておきました。4人1室のコンパートメントです。

ここでちょっと面白い話が。同室のお姉さまに「昨日、玉門関、陽関、鳴砂山にいなかった?」と聞かれて、前日の行程がほぼ一致していることが判明しました。 私は気が付かなかったのですが、全観光地で遭遇していたようです。 ちなみにこの方は玉門関→陽関→雅丹→鳴砂山となかなかの強行軍だったそうです(雅丹はかなり遠いので。。。)。 聞けば、音楽関係の出版社に勤めていて出張で敦煌に来て、仕事の前日に観光を詰め込んだとのことです。行動力がすごい。

また、同室のおじいさんからは「日本では股引*7履かないって聞いたけど、本当? 寒くないの???」と聞かれたので、「中国北部に比べるとそんなに寒くないですよ~」と返したり。 言われてみると確かに、東京近辺だと履かなさそう。

軟臥は特に消灯時間は決まっていなくて、各部屋で自由に消灯して良いとのことでした。

乗車時間はだいたい11時間。 多少揺れますが、横になれるので夜行バスと比べるとはるかに快適に過ごせました。

翌日に続きます。

amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

参考文献

*1:ただし、参考文献[1]p.62~p.63によると、青色の顔料の全てがラピスラズリというわけではないようです。

*2:実物の大半は国外にあるので、それはそう。

*3:参考文献[2]p.124~p.125

*4:参考文献[3]では、敦煌の食文化を論じるにあたってこのような壁画も史料として利用していました。

*5:参考文献[1]p.53「敦煌莫高窟がある崖壁は、コンクリートの荒打ちのような「第四期玉門系礫岩層」に属し、砂岩や石灰岩のようには彫刻には適さない。そこで尊像は、木芯あるいは石胎の彩色塑像が作られた。塑像は、河西一帯の石窟に共通する技法といえる。」

*6:国鉄路 Y669 敦煌 20:35 → 翌日7:25 蘭州西

*7:確か"衬裤"と言っていた気がする...?