世界史ときどき語学のち旅

歴史と言語を予習して旅に出る記録。西安からイスタンブールまで陸路で旅したい。

2023年 河西回廊の旅 10日目 : 蘭州から西安への移動と西安観光

2023年シルクロード河西回廊の旅10日目(2023-09-23)の記録です。この日は西安に戻り、大雁塔を観光しました。

今回の旅全体のまとめページはこちら amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

前日の旅行記はこちら amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

西安への移動

前日夜に敦煌からの寝台列車に乗車し、目を覚ますと蘭州の近くまで来ていました。 夜行寝台列車の「横になってすやすや寝て、目を覚ましたら別の都市にいる」という体験が好きです。

蘭州西駅で降ります。ここで高速鉄道に乗り換えて西安に向かいます。

蘭州西駅では駅から出ずに乗り換えができて便利でした。 写真の階段の右側に書いてある通り、階段を上った先で乗り換えです。

もしかすると、本来は乗車改札になっているものを乗り換え口として運用してる...?

乗り継ぎに1時間程度の余裕を取っておいたので、ここで朝食にします。

朝から牛肉麺。さすが蘭州だけあって、駅の中に牛肉麺のお店が5店舗くらいありました。

中欧班列(中国とヨーロッパを結ぶ貨物鉄道、くらいの雑な理解)で輸入されたと思しき商品を扱うお店。 原産地とか確認しそびれた。

高速鉄道に乗り、西安北駅で下車。西安地下鉄に乗り換えて市街地に向かい、ホテルにチェックインしました。 このとき風邪っぽくて体調いまいちだったので、写真少なめです。

なお、前日まで敦煌で、気温は30℃近く、かつ日差しが強かったのですが...西安に来て、最高気温17℃くらい、かつ雨と風、と気温差に驚きました。

昼食

ホテルの近くのお店で、西安名物の凉皮と肉夹馍の昼食にしました。

凉皮のタレは底にたまっているので、よく混ぜていただきます。ツルっとした麺とラー油や黒酢の組合せが爽やかで美味しいです。 肉夹馍は日本で行ったお店よりもスパイスの香りが効いていて好き。 どちらも美味しいので、日本にいても定期的に食べたくなるメニューです(特に夏の凉皮)。

昼食を食べたら、地下鉄で大雁塔(というか正しくは寺自体は大慈恩寺)に移動しました。 なお、西安は公共交通がかなり便利で、市街地であれば地下鉄と路線バスで全ての移動が済みました。

地下鉄の乗り方については別記事に書きました。 amber-hist-lang-travel.hatenablog.com なお、初日はWeChat Payが使えなくて単発の切符を買ったのですが、この日はWeChat Payの「乘车码」ミニアプリで乗車しました。

大慈恩寺・大雁塔

大慈恩寺には予約無しで、当日入場券を購入して入れました。 WeChat Payで入場券を購入し、QRコードを見せて入場しました。 入場料と音声ガイドで、まとめて60元でした。

入ってすぐのところからの写真。左に見えるのは清代の鐘楼か鼓楼です(鐘楼か鼓楼、どっちだったか忘れた。。。) 朝と夕に鳴らして、お努めの開始と終了を知らせたとのこと。 なお、清代の鐘楼と鼓楼と、唐代の大雁塔を除くと、古い建物は実は少なかったと思います。

大雄宝殿。跪いて礼拝している人が絶えませんでした。 なお、礼拝する場所は跪く用のクッション?が置かれていました。 当然と言えば当然ですが、寺での礼拝の作法が日本とは異なるのが印象的。

「財神」なる神も祀られていました。 像の造形を見るに、おそらく仏教ではなく道教民間信仰の神様かな...? だとしたら、日本の神仏習合のようで興味深いです。

近代に建てられた建物が多いとはいえ、風情があります。

大雁塔。唐の時代から1000年の時を超えてそびえたつと思うと驚きを禁じえません。 レンガ造りですが、よく見ると柱や梁のような模様が表面にあしらわれています。 たぶん構造的な意味はなくて純粋に装飾的なものかと思うのですが、木造建築を模した装飾だとしたら面白いです。

さて、この塔ですが、追加料金(25元)で中に入って登れます。 中は近代の改装?がなされているようです。 世界遺産のはずなので、どうやってユネスコの許可を取りつつ工事したのか気になります。

塔の窓からは伽藍や周囲の景色を眺めることができます。

周囲は「大唐不夜城」としてかなり派手に開発されていて、夜はかなり賑わうようです*1

塔の中にはささやかながら展示もありました。 写真は明の万歴年間の銘がある風鈴。 唐代に建てられた塔に明代の風鈴が吊るされて、それが今は塔内に収蔵されていて...という歴史の積み重ねに思いを馳せました。

ちなみに、塔の1階?には様々な石碑があります*2

暗い中スマホのライトで撮ったので観にくいですが、こちらは「題名」と言って、科挙の合格者がその名前を刻んだもののようです。 この慣習自体は唐代からあるようですが、私が見たものは明清のものでした。 上の写真のものは明の嘉靖年間に刻まれたもののようです。氏名や出身の県が書かれているのが見て取れます。 よーく見ると1人名前が判読できない人がいるようなのですが、何かやらかして削られたのでしょうか。。。

こちらは唐代の書の名手、褚遂良の手による「大唐三蔵聖教序記碑」です。 碑文の文面は唐高宗によるもので、三蔵法師玄奘の経典翻訳に寄せたものだそうです*3。 なんとも豪華な歴史上の人物が勢ぞろいしており、感慨深いです。 ただ、あまり近づいてみることはできませんでした。あと、表面には拓本を貼ってある...?

唐の裏には現代の新しい建物があり、玄奘の功績がレリーフなどで表現されていました。 ちょっと面白かったのがこちらの注意書き。「谢谢合作」の後に「阿弥陀佛」とあって、さすが仏教寺院だなと思いました*4

まさかの社会主義核心価値観。

再び大雁塔に戻ると、塔の周りを何やら唱えながら*5ぐるぐる回ってる人たちがいました。 服装を見る限り僧侶ではなさそう。

また、このときは風が強く、塔の四隅につるされた風鈴が風に揺れて音を響かせていたのも印象的でした。

夕食

寒いので夕飯は温かいものが食べたいなー、ということで、地下鉄で移動し、高德地图で見つけたお店で羊肉泡馍を食べました。

レジで注文し、食券を受け取ります。 注文時に「馍を自分でちぎるか、お店で切ったものにするか」を訊かれました。 せっかくなので自分でちぎる方にしました。

上の写真のお焼きのようなものが馍。 これを小さくちぎります。馍は意外と硬く、力を入れてちぎる必要がありました。 細かくちぎった方が美味しい気がするけど、根気が足りなかったので少しさぼりました。

ちぎり終わったら、食券と一緒にカウンターに持っていって、スープを注いでもらいます。

と言ってもすぐに注いでもらえるわけではなく、番号札を渡されて呼ばれるまで待ちます。 このときは人も多く、けっこう待ちました。 相席の人と「お店が切ったものにしたほうが早かったかも?」「でもせっかくだから自分でちぎる体験をしたいね」という話をしました。 番号を呼ばれたので取りに行くと、できあがった羊肉泡馍を渡されます。

スパイスと羊の香りの組合せが調和し、スープを一口すするだけでじんわりと五臓六腑に染み渡る美味しさでした。 やはり寒いときに食べる温かいものは正義。 脂も多いはずですが、つけあわせの酢漬けのにんにくを齧りながらいただくとさっぱりしてなお良かったです。

鐘楼

食後、ホテルへの帰り道の途中に鐘楼に立ち寄りました。

明代に建てられた建物とのことですが、今でも幹線道路のど真ん中に鎮座しています*6

ちなみに周りはたくさんの人で混雑していました。 漢服コスプレ(?)で写真を撮る人も多数いたので、つい写真に収めてしまいました。

翌日に続きます。 amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

*1:私は日没前に撤収したので、幸いにしてこの人混みには遭遇しませんでした。

*2:これらの石碑は、いずれも塔に登るチケットが必要なエリアにありました。

*3:現地の解説パネルより。

*4:昔観た中国の歴史ドラマとかで僧侶が何かあるごとに「阿弥陀佛」を枕詞のように使っていた記憶があるのですが、現実世界でもあるのか、、、と妙な感動をしてしまいました。

*5:釈迦牟尼」だけは聞き取れた気がする

*6:トルコのカイセリを訪れたときに見た「道路の中央分離帯に鎮座するキュンベット(墓塔)」を思い出しました https://amber-hist-lang-travel.hatenablog.com/entry/2023/09/03/213102