世界史ときどき語学のち旅

歴史と言語を予習して旅に出る記録。西安からイスタンブールまで陸路で旅したい。

2023年冬 西安と蘭州の旅 9日目 : 西安(鐘楼・鼓楼、清真寺など)

2023年冬 西安と蘭州の旅9日目(2023-12-21)の記録です。 この日は鐘楼の近く、主に明清時代の西安の古建築を巡ります。

今回の旅全体のまとめはこちら amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

前日の旅行記はこちら amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

朝食

昨日と同じお店で朝食にします。今朝は黑米粥,糖糕,ゆで卵。 5.5元。 ただ、糖糕は揚げたてじゃなくて冷めてたのはちょっと残念。。。

朝食帰りに見つけたもの。 「板凳不坐蹲起来」は「陕西八大怪」の1つとして耳にしたことがあるのですが、これを見るまで完全に忘れていました。 ただ、実際に「板凳不坐蹲起来」している人は今回の旅では見かけなかった気がします。

体調がよくないのでお昼近くまでホテルでゴロゴロします。 滞在型の旅だとこうやって自由気ままに過ごせるのも良いですね(5月のトルコと9月の河西回廊は移動が続いたので。。。)

鐘楼・鼓楼

鐘楼

前回の9月の旅でも今回の旅でも鐘楼は何回か見ているのですが、ようやく鐘楼の中に入ります。 14世紀、明の時代に建てられた建物*1で、かつて鐘で時を告げていたそうです*2。 車道に取り囲まれているので一見するとこれを突破する必要があるように見えますが、地下通路で安全に行けます。

ちょっと反射で見にくいですが、左の写真の案内の通り、地下鉄の鐘楼駅直結です。 チケット売り場も地下にあります。 鼓楼とのセット券で50元でした。(単体だと、鐘楼と鼓楼とでそれぞれ30元ずつ。)

地上に出て鐘楼に入るところあたりから撮った写真。 車通りも多い上に車線も御覧の通り多いので、これを徒歩で突破するのは無理ですね。

近すぎて超広角でなんとか収めた。外観は車道の向こうから見るのがよさそうです。 手数が多いとは言えないかもしれないですが、斗栱(組物)が目立ちます。

建物の中に入ると、1階は鐘楼の歴史についての展示スペースになっています。

面白いことに、鐘楼は建築当初は今よりも西の場所にあったのですが、16世紀に今の場所に移築されたそうです。というのも、西安城が北と東に拡張され、鐘楼がもとあった場所が城内の中心からずれてしまったためだそう*3

移築について記した石碑の拓本。 解説曰く石碑本体は鐘楼内部の壁にあるとのことですが、このときは気づかずに見逃してしまいました。。。

歴代の修理の記録についての展示もあります。

ちょっと目立たないですが、階段で上の階に行けます。

このときは2階には扇子などが展示されていました。

天井を見上げたところ。 正方形の中に小さい正方形を45度回転させて収めていますが、けっこう珍しい造りな気がします(たぶん)。 往時はここに鐘を吊るしていたと思うと感慨深いです。 なお、ここには一時期景雲鐘(前日、西安碑林で見たもの)がつられていたという話を現地で見た記憶があるのですが、要出典*4

華やかな装飾も目立ちます。 と言っても、これらの絵はほとんどが20世紀半ばに描きなおされたものだそうです*5

外に目を転じると、城壁の門も見えます。 前日は城壁から鐘楼を見ていたので、ちょうど逆ですね。

写真中央やや右の建物は、今いる鐘楼と対になる鼓楼です。 次は鼓楼に向かいます。

鼓楼

再び地下に潜り、地下通路の9番出口で広場に出れば、鼓楼はすぐそこです。

上の写真は東側の入口から見たところですが、

南側から見た姿はこちら。 鐘楼が正方形なのに対して、こちらは横長の長方形です(南北を縦とみなした場合)。

24節季をモチーフにした太鼓が並べられていました。

内部には太鼓についての展示が少しありました。鼓楼そのものの歴史についての展示は少な目(そちらは鐘楼の展示でも述べられていたので、差別化のためかも?)。 ステージの上に編鐘などの楽器も置かれており、タイミングがよければ演奏が聴けるとのことでした。

また、目立たないですが上の階にも行けます。 先ほどの展示スペースからいったん外に出て、ぐるっと回ると階段があります。

こちらの階では、主に清代(たぶん)の家具の展示がありました。

外に出ると、先ほどの鐘楼もよく見えます。

回民街

お腹もすいてきたので、鼓楼近くの回民街で食べ歩きにします。

多数の屋台が立ち並び、観光客も多くて賑わっていました*6。オフシーズンの平日でこれなので、夏休みとか連休は大変そう。 屋台で数が多かったのは、梨汤,ザクロジュース、甑糕、肉夹馍,肚包肉,臭豆腐あたり。

ゴミ箱が10~20mくらいの間隔で多数置かれていて、清掃員も多いからか、ゴミはほとんど落ちていませんでした。 なお、屋台が立ち並ぶ割には、道端で物を食べてるひとは意外と少なかった気がします(もしやホテル持ち帰っている人が多い?)。

いろいろあって目移りしますが、まずは西安名物としてよく聞く肉夹馍のお店に並びます。写真中央のお兄さんに声をかけてお代を払い、

写真左の紙袋(?)を受け取ります。 で、屋台でこの紙袋を渡して肉夹馍を包んでもらう、という流れでした。 紙袋が食券代わりということですね。

ちなみに肉夹馍用意する際にラー油を入れてよいか訊かれたので、少な目でお願いしました。 ある程度辛いのは好きなのだけど、お腹が弱いので。。。

お次は柿子饼。柿を生地に練りこんで焼いた饼です。 ほんのりとした甘さと柿の香りを感じる素朴な味わいです。 ちなみにお隣には多数の干し柿も並べられていました。

こちらの肚包肉は名前の通りモツで肉を包んだ料理で、初めて知りました。 百度百科によると新疆ホータン名物らしいです。

さすがに丸のまま出されるわけではなく、切って出してくれます。 肉とモツの食感に、スパイスの香りと辛味と酸味の効いたスープがよく合って美味しかったです。

甑糕。 ナツメともち米?と聞いていたのでちまきに近いようなものかと思ったら、米よりもむしろナツメがメインでした。

ナツメが大好きなのでとても嬉しいのですが、さすがに多すぎでお腹いっぱいになりました。

お腹も満ちたので、回民街にほど近い清真大寺に向かいます。

清真大寺

清真寺とはモスクのこと。 西安にはいくつか清真寺があるのですが、観光地として最も有名なこちらは「西安清真大寺」「化觉巷清真大寺」などと検索すれば出てきます。 8世紀の唐代創建*7で、現在の建物は18世紀後半の乾隆帝時代*8のものだそうです。 観光客は少なめで落ち着いた雰囲気でとても良かったです。

営業時間などの情報はこちら。 このときは入場料15元でした。 なお、チケット買わずに入ろうとした人が止められて「観光客は有料、礼拝に行くムスリムは無料」と説明され、身份证らしきものを見せて無料で入っていました。

どう見ても伝統的な中国建築で、ともすれば仏教や道教の寺院にも見えてしまうのですが、モスクです。

写真右の塔はミナレットだそう。

敷地は東西方向に細長く、見学時は東から入って西に進む形です。 その一番西側にあるのが、上の写真の礼拝堂です。 メッカの方角は大雑把には西なので納得感がある。 なお、礼拝堂は礼拝をする人以外は立ち入り禁止と書かれていました。

モスクらしくないと書いてしまいましたが、少し注意するとアラビア文字らしきものがそこかしこにあしらわれていることに気が付きます。

壁の装飾や

門(?)の上など。

また、アラビア文字らしき文字で書かれた石碑もありました。

中国の石碑は縦書きに適した縦長の形式のはずなんですが、これはそこになんとか横書きしている...? あと、これは現代ものですが、解説パネルもアラビア文字のものもありました。

逆にこちらの龍(塔の下にあったもの)は中国らしいモチーフですね(通常、イスラームの宗教建築は動物を描くのは避けられることが多いはず。)。

なお、案内図によると展示室がいくつかあるとのことでしたが、開館していないものが多かったです。

高家大院

明清時代の名家の邸宅を整備したもの。

前近代の邸宅あるあるの、中庭式の住宅*9です。 ただ、敷地に比べて部屋数が多いようで中庭は小さめに感じました。ということで、日当たりはあまりよくない印象です。(ただこれは曇ってたからかも。晴れてたら印象が違うかもです。)

追加料金で、伝統的な影絵芝居を観たり、地域の民俗音楽の演奏などを聴いたりできました。 料金やスケジュールは(少なくともこの時は)上の写真の通り。

影絵芝居は開始15分に会場に向かったのですが、既に人が座り始めており、なんとか最前列を確保(上の写真は終演後に撮ったもの。)。 方言がきつくて聞き取りは難しいのですが、上に字幕が出るのでそれを追えば分かる、という親切仕様でした。 演目は、「若い男が自分の(まだ会ったことのない)許嫁の顔を一目見るために、商人のふりをして相手方の家を訪ねる」という、ユーモラスなものでした。 ちなみにこの影絵芝居、「漢代まで遡る」と説明されていたのですが、典拠が気になります。

民俗音楽の演奏は中庭のこちらが舞台。 なお、屋外の上に日が当たらないし、座ってじっとしているのでかなり寒かったです。。。 演奏の方は、椅子まで打楽器に使っていて驚きました。 雄たけびと言っても良いような掛け声(?)が印象的。 元々は労役の際の歌だったと解説で言っていた気がします。

見終わって出るときに後ろを振り返ったのですが、写真の通り、入口はあまり目立たないです。

夕食

夕飯はこの日もご当地の羊肉、ということでホテルから少し歩いて水盆羊肉のお店にします。

もろもろ足して、合計46元。 野菜が欲しいと言ったら、野菜盛り合わせにしてくれた。 量がちょっと多かったかなーと思いつつ、美味しいし体も温まって嬉しい。

ただ体調がいまいちだったので、味を存分には楽しめなかったかもです。 また西安に行きたいと思う理由が1つできました。次こそは風邪をひかずに楽しみたい。

翌日に続きます。 amber-hist-lang-travel.hatenablog.com

参考文献

*1:現地の解説の石碑より。ただし後述するようにそのあと移築されています。

*2:前日の城壁上での解説の銘板より。

*3:解説パネルより。

*4:百度百科にはあるものの、他のきちんとした出典は未確認です。https://baike.baidu.com/item/%E6%99%AF%E4%BA%91%E9%93%9C%E9%92%9F/10123680

*5:1階の解説パネルより。

*6:写真は人の流れが途切れたタイミングで撮っています。

*7:上の写真など現地の情報では742年創建とあるのに対し、参考文献[1]p.248では792年創建と記載されていました。

*8:参考文献[1]p.248

*9:外側の通りに対して閉鎖的で、内部に中庭をもち採光などはもっぱら中庭側に依存するもの、という程度の意味。